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急斜面の大倉山シャンツェに沿って整備の行き届いた遊歩道がスキーリフト
と反対側に付いている。遊歩道を降りて山麓のクリスタルハウスで生ビールを
味わって一休みの後、大倉山の前に立ち塞がる荒井山へと足を向ける。元々は
荒井某という人の持ち山からこの名前が付いた。昭和年代の終わりまで市民ス
キー場として賑わった荒井山も、今では市の所有する緑地公園となり訪れる人
も少なく、いつ来てもひっそりとしている。札幌市民でもここに市の遊歩道が
あることを知る人は少ない。荒井山の山腹を巻くように遊歩道を下っていくと、
かってのスキー場として使われていたすり鉢状の斜面が現れ、ここに少年用の
小さなジャンプ台が2基座っている。
昔のスキー場斜面の頂上にはいつの間にか「荒井山展望台」という標識が新
たに掲げられている。周囲に群生するクズのツル葉の向こうの市街の方を眺め
ると、円山と神社山の狭間から遠く札幌ドームの銀傘が見られることが分かっ
た。何度も歩いたコースでもそれなりに小さな変化は起こっているし、今まで
気が付かなかった新たな発見もまた楽しい。
展望台からやぶの中を抜けて西側の沢に降りて行くと、鬱蒼とした高いスギ
・ヒノキ木立に囲まれた荘厳な空間がある。明らかに何らかの神域・施設がお
かれていた痕跡がある。この場所には、最近まで「福寿稲荷」と呼ばれていた
鎮守社が座っていた。伝え聞いたところでは、かっての荒井山の持ち主、荒井
家の守り神であったそうな。今では、堂宇のあった空間とその前の草生した石
段組みが侘しくも荘厳さを保って残っている。いつの日かここも自然の植生の
たくましい侵食の中に埋められてしまい、人々の記憶から失われるのだろうか。
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荒井山の2つの少年シャンツェ |
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荒井山展望台より遠く札幌ドーム |
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荒井山西沢の福寿稲荷跡 |
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荒井山展望台より札幌市街 |
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